コース:アート・パートナーズ
講師:松本大(マネックスグループ株式会社代表執行役社長CEO)
日時:7月23日(火)19:00-21:00 場所:マネックスグループ株式会社(赤坂)
近年「企業とアート」に関心が集まっていますが、10年以上も前からオフィスにアートを取り入れる「ART IN THE OFFICE」という活動をおこなっているのがマネックスグループ株式会社です。
今回は、「ART IN THE OFFICE」の展示場所である マネックスグループ株式会社のプレスルームにお邪魔し、AITディレクター・塩見有子さんのファシリテーションのもと、マネックスグループ株式会社代表執行役社長CEO・松本大さんと受講生との対話形式でのレクチャーが行われました。
2019年の受賞者・吉田桃子さんによる《first “I.U” zone.2》が完成したばかりのプレスルーム。https://www.monexgroup.jp/jp/esg/art_in_the_office/2019.html
■ART IN THE OFFICE とは?
「ART IN THE OFFICE」は、マネックスグループのプレスルームの壁にあわせて作品を提案してもらい、受賞者の作品を約1年間展示するという公募プログラムで、2008年から行われています。受賞作家はオフィスに滞在して作品制作を行います。
特徴のひとつは、作家がワークショップを実施し、社員との交流を持つということです。ワークショップは自由参加ですが、はじめて会う社員同士もお互いにオープンに話せる雰囲気になっていくと松本さんはいいます。
■社員の反応は?
オフィスで現代アートの制作・展示を行ったり、ワークショップを行うことに対して、社内ではどのような反応があったのでしょうか?
当初、社員はほとんど興味を示さず、初めの3-4年は落ち着かない企画だったと松本さんは振り返ります。ところが、アート系の審査員に加え、毎年異なるビジネス系の審査員を迎えることによって、毎年違ったテイストの作家が選出されるうちに、毎年異なるファンが生まれて、市民権を得ていったそうです。このような事例もあり、こうした活動は単発で実施するのではなく「サステイナブル(持続可能)であることが大切」と松本さんは言います。
■ビジネスへのアートの効果は?
一方、これらの活動がビジネスに与える影響について質問が挙がると、企業の業績に直結するものではなく、また数字に表れるものでもないといいます。
また「社員に対しての効果は?」という質問に対しては、「絶対あるはずだが、計測不可能。」とのご回答。そういった意味でも、短期的な効果を期待した「投資」とは考えず、長期的な取り組みとして捉え、企業にも負荷なく続けていけるかたちにすることが大切なのだそうです。
一方、ART IN THE OFFICEの受賞者にとっては活動の場を広げるチャンスの1つであり、その後も活躍されている作家さんが多くいらっしゃるといいます。
レクチャーの中では、この他に松本さんの考える新しいアートビジネスの案や、松本さんが「ボイジャー2号」という別会社をつくって行っている社会起業家・コンテンポラリーアーティストを支援する活動などについてもお話いただきました。
昨今のアートとビジネスの話題では、アートの効用に注目が集まりがちですが、即効性を求めるのではなく、大きな負荷をかけずに”続けていく”ことの大切さも学ぶレクチャーとなりました。
高砂理恵