コース:フクシとアートのラボ
講師:堀内奈穂子(AITキュレーター / dear Meディレクター)
日時:4月18日(木)19:00-21:00 場所:代官山AITルーム
第一回目となるフクシとアートのラボでは、フクシとアートの歴史と、子どもたちを取り巻く社会的課題とアートの可能性を探るプロジェクト「dearMe」についてのレクチャーでした。
・フクシとアートの歴史
18世紀にジャン=ジャック・ルソーが書いた教育論『エミール、または教育について』(仏: Émile, ou De l’éducation)では、「自然、事物、教育」を起点とした個性尊重・自由主義的な教育観は、現代の理想とされる教育にも繋がる部分が多く見受けられるといいます。そうした情念教育の系譜をお話した後、幼稚園(kindergarten)を創設し、アートの領域にも影響を与えたドイツの教育学者フレデリック・フレーベルの思想を参照にしながら、レクチャーが進行しました。フレーベルが子どもたちの表現力や認識力、想像力を引き出すために草案した教育的遊具の「恩物」から構成される幾何学的構造や立方体は、その後、バウハウスに関わった多くのアーティストや、コルビジェやフランク・ロイド・ライトなどの著名な建築家の構想にも影響を与えました。
また、アートの歴史を紐解くと、キュビズムやフォービズム、ダダイズムのアーティストたちは進歩した西洋の文明に対して未開発の原始的な文化や人々、または生命力に溢れる子どもへ憧れを持つようになり、子どもの視点や表現、また「無意識」の世界は作品制作にも大きな影響を与えたと言います。
・dear Meプロジェクトとは?
そうしたアートと子どもの歴史を説明の後、アートの思考や表現を通して、子どもたちが自己肯定感を持てる社会づくりを目指すために、2016年からAITがスタートしたプロジェクトdear Meの紹介が行われました。dear Meでは、、主に「美術館鑑賞プログラム」「国内外アーティストとのワークショップ」「現代アートと福祉を考察する講座」「アーカイヴと発信」を活動の軸にしています。
子どもたちが社会の中での自分の役割や生きやすさを模索する力を養うために、思考力や視点を転換する幅を広げることが大事であるといいます。
dear Meについて詳しい情報はコチラ→ http://dearme.a-i-t.net
アートが様々なバックグラウンドを持つ人々の心へ、または社会に対して、何をどう働きかけることをできるのか考えさせられるレクチャーでした。
参加者には福祉/教育分野に携わる方々も多く、講義の後はアートとフクシの今後の活動について一緒に考えました。
渡邊桃加