2000年から美術館は新たな時代に入り、自分たちの存在意義をもう一度考え直しているともいえるでしょう。観光やエンターテインメント産業の時代において、美術館は何を行うべきなのでしょうか。このような問題を理論だけではなく、実践に移している動きとして「アルテ・ウティル(有用芸術)」が挙げられます。これは10年程前にキューバのアーティスト、タニア・ブルゲラが提示した考え方で、「実用的アート」と訳すことができます。この考えの下で、ヨーロッパではイギリスやオランダの美術館が、この思想をベースにした改革を行っています。コミュニティー、社会との繋がり、サスティナビリティやユーザーといったキーワードのもと、実験的な活動が広がっています。本レクチャーでは、群馬県のアーツ前橋館長の住友文彦氏を招き、この世界的な動きと日本への影響をともに探ります。

講師

住友文彦(アーツ前橋館長/東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科准教授)

1971年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科修了。金沢21世紀美術館建設事務局、NTTインターコミュニケーションセンター、東京都現代美術館を経て、2013年より現職。「ヨコハマ国際映像祭2009」ディレクター、「メディア・シティ・ソウル2010」共同企画、別府現代芸術フェスティバル2012「混浴温泉世界」共同キュレーター、「あいちトリエンナーレ2013」キュレーターなどを務める。また、2006年にはオーストラリアでおこなわれた「Rapt!:20 comteporary artists from Japan」展、2007年には中国を巡回した「美麗新世界」展では、共同キュレーターとして日本の現代美術を海外へ紹介する。主な共著に、『キュレーターになる!』(フィルムアート社、2009年)、"From Postwar to Postmodern, Art in Japan 1945-1989: Primary Documents"(Museum of Modern Art New York、2012)がある。専門は戦後美術研究、及び美術と社会の関係。

ファシリテーター

ロジャー・マクドナルド(MADプログラム・ディレクター/AIT 副ディレクター)

東京生まれ。イギリスで教育を受ける。学士では、国際政治学。修士では、神秘宗教学(禅やサイケデリック文化研究)。博士号では、『アウトサイダー・アート』(1972年)の執筆者ロジャー・カーディナルに師事し美術史を学ぶ。1998年より、インディペンデント・キュレーターとして活動。「横浜トリエンナーレ2001」アシスタント・キュレーター、第一回「シンガポール・ビエンナーレ 2006」キュレーターを務める。2003年より国内外の美術大学にて非常勤講師として教鞭をとる。長野県佐久市に移住後、2013年に実験的なハウスミュージアム「フェンバーガーハウス」をオープン、館長を務める。また、国内初の英国式「チャトニー」(チャツネ)を生産・販売している。興味は美術史、絵画、変性意識状態、オーディオ鑑賞、踊り、山。AIT設立メンバーの一人。
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レクチャータイトル:ミュージアム3.0と拡張する美術館について


日時:12月12日(火)19:00-21:00

場所:AITルーム(代官山)

定員:30 名

講師:住友文彦(アーツ前橋館長/東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科准教授)

受講料:¥3,900(税別)

備考:レクチャー終了後、ミニ・バーをオープン(21:00-21:30/有料)

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料金:一般 ¥16,000(税別)*コース生 ¥2,000引

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料金:¥7,500(税別)*コース生 ¥2,000引

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ナビゲーター:ロジャー・マクドナルド(AIT)ほか
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