※本コースに含まれる以下のレクチャーは、個別に購入することができます。
[イントロダクション] dear Me 子どもから大人への「教えない」学び
日時:4月18日(木)19:00-21:00 場所:代官山AITルーム
アートとフクシを考える一歩として、AITが2016年より実践する、児童福祉施設や様々な環境下にある子どもたちとアーティストをつなぐ「dear Meプロジェクト」の活動を紹介します。dear Meでは、子どもたちがアーティストやアートの考えに出会うことで、表現が生まれる歴史や社会的な背景、世界との繋がりを鑑賞や創造のワークショップを通して、自分の視野を広げ、人に伝えることを試みています。そこでは、大人から子どもへの一方向の学びではなく、アート表現を介して相互に思考や世界を交換・受容する対話の場が機能します。dear Meの3年の活動の中で見えた「教えない」学びについて考えます。
講師
堀内 奈穂子(AITキュレーター / dear Meディレクター)
中心と周縁 ジェンダーとアートの共闘性
日時:5月11日(土)13:00-15:00 場所:代官山AITルーム
親が感じる社会的なプレッシャーやそこから生じる子どもの虐待などの社会的課題を考えるとき、それはジェンダーの問題とも深く関係していると考えられます。女性と戦争、ナショナリズムをテーマに扱うアーティストの嶋田美子氏を招き、日本におけるアートとジェンダーの関係性や歴史を辿ります。嶋田氏は、映像やパフォーマンスを通して戦争の記憶や暴力について検証し、近年は、家庭やコミュニティ内においての存在の虚実を、フィリピン、韓国、インドネシア、タイといったアジア圏で採取するフィールドワークを行ってきました。作品の背景を読み解きながら、社会の最小単位としての「家族」の政治性や、近代家族制度による性役割分業が助長してきた「生きにくさ」について考えます。
講師
嶋田美子 (美術家)
「安心して絶望する」当事者研究とべてるの家の実践より
日時:5月30日(木)19:00-21:00 場所:代官山AITルーム
北海道浦河町にある、精神障害などを抱えた当事者と町民有志によって設立された地域活動拠点「ベてるの家」では、当事者が自らの経験を「専門家」として研究し、生きる苦労とうまく付き合う方法を考える「当事者研究」が行われています。統合失調症などを持つ当事者が主体的に表現し、弱さや経験をひらくことで繋がりをつくる実践は、親の精神疾患と子育てなどの「社会的養護」はもちろん、社会に潜む様々な課題と密接に関係しています。べてるの家の活動にも関わり、近年は豊島区で障がいを持つ人々の起業を通じて新たな暮らしや働き方を創造する社会実験の場「Base Camp」を立ち上げた向谷地宣明氏をお招きし、様々な人がともに生活し、苦労を分かち合う中で生まれる多様なコミュニティや家族のあり方、福祉の境界を拡張する実践について考えます。
講師
向谷地宣明(MCMedian代表取締役 / NPO法人BASE代表理事)
社会課題を「キュレーション」する アーツ前橋「表現の森」より
日時:6月13日(木)19:00-21:00 場所:代官山AITルーム
群馬県のアーツ前橋で「表現の森」を企画した今井朋氏にお話を聞きます。「表現の森」では、2016年よりアーティストと前橋市内の施設や団体が協働し、5つのプログラムを開始しました。アウトプットは展覧会に限らず、アーティストと団体・個人とのリサーチや対話、シンポジウムやアーカイブ構築など、協働のプロセスを多角的に可視化し、長期的に検証しています。美術館が社会的課題をキュレーションする意義や、そこから生まれる新たな関係性のあり方、アートと福祉の協働によって生まれたコミュニティの変化などについてうかがいます。
講師
今井朋(アーツ前橋学芸員)
表現の森特設サイト:https://www.artsmaebashi.jp/FoE/
てつがくカフェ「語りにくさを、ひらく」
日時:6月22日(土)13:00-16:00(レクチャー1h+ワークショップ2h) 場所:代官山AITルーム
哲学者でフェリックス・ガタリ研究者の山森裕毅氏を招き、レクチャーと「てつがくカフェ*」を組み合わせた3時間のセッションを行います。レクチャーでは、コース前半で取り上げた「子ども」「マイノリティ」「当事者」などのキーワードを山森氏が哲学の視点から読み解きます。後半は、テーマや問いを受講生が出し合い、対話をしながら掘り下げます。身近な問いや個人的な問題と思われがちなことも哲学で紐解くことで、社会と接続し、自己や他者の理解をじっくりと深めることができます。「てつがくカフェ」はコース後半にも行い、講師、ファシリテーター、様々な経験値やバッググラウンドを持つ受講生の議論を深め、関心をひらき、共有します。
*哲学カフェ(仏:café philosophique)とは、哲学者マルク・ソーテ(1947年–1998年)がフランスのパリで創立した哲学的な対話をするための草の根の公開討論会。(引用:Wikipedia)
講師
山森裕毅(大阪大学COデザイン・センター特任講師)
自己をトリップする 瞑想、身体、アート
日時:7月11日(木)19:00-21:00 場所:代官山AITルーム
アートの歴史の中では、どのように「自己」が捉えられてきたのでしょうか。アートと「変性意識」や「スピリチュアル」などの関係性を紐解きながら、思考の変容や新たなアートの体験を促します。人間は、何千年も前から強烈な変性意識体験をしてきました。それは、人間であることの根本的な要素でもあるにも関わらず、日常生活の中で私たちはそのことを忘れ、システムや過密な情報にさらされています。それは、「自己」のみではなく、「他者」に対する想像力をも鈍らせてしまっているとも考えられます。まずは、より広く複雑な宇宙の領域とつながることを試みたアーティストの実践や歴史を紹介しながら、皆さん自身の意識を固定観念や秩序から自由にし、アートを通して自己を発見する旅に出てみましょう。
講師
ロジャー・マクドナルド(MADプログラム・ディレクター / AIT副ディレクター)
https://www.fenbergerhouse.com
堀内奈穂子(AITキュレーター / dear Meディレクター)
てつがくカフェ「これでいいのだ」
日時:8月3日(土)13:00-16:00(レクチャー1h+ワークショップ2h) 場所:代官山AITルーム
コース後半で紹介したレクチャー内容で取り上げたキーワードを掘り下げる哲学レクチャーと「てつがくカフェ*」を組み合わせた3時間のセッションの2回目です。
今回の「てつがくカフェ」では、受講生の皆さんに加え、山森氏が月に1度池袋のコミュニティホーム「べてぶくろ*」で開催するてつがくカフェの参加者にも混ざっていただき、多様なメンバーでこれまでのレクチャーの内容や話し合いたいテーマを共有します。哲学を頼りに困難や生きにくさを開くことで、様々な考えを受容し、創造的な思考に変える術を考えます。
*哲学カフェ(仏:café philosophique)とは、哲学者マルク・ソーテ(1947年–1998年)がフランスのパリで創立した哲学的な対話をするための草の根の公開討論会。(引用:Wikipedia)
*「べてぶくろ」は、「浦河べてるの家」が培った精神を受け継ぎ、東京・池袋を拠点として、共同住居やグループホームの運営、当事者研究、べてるの商品販売等の活動を行う任意団体です。
講師
山森裕毅(大阪大学COデザイン・センター特任講師)
「複雑さ」を切り取る 観察と瞑想のドキュメンタリー
日時:8月8日(木)19:00-21:00 場所:代官山AITルーム
「観察映画」で知られるドキュメンタリー映画作家の想田和弘氏をお招きします。精神科診療所に集う様々な患者たちの姿を撮影し、タブー視されがちな「心の病」について扱った『精神』。巨大政党から公認された無名の候補者の選挙活動を生々しく描いた『選挙』など、社会の中で見過ごされがちな存在、タブーとされる世界を観察することで、想田氏は世界の「複雑さ」を切り取ってきました。近年は、国に対し、夫婦別姓確認訴訟や在外邦人国民審査権訴訟を行うなど、プライベートでも社会制度への問題提起を積極的に行なっています。私たちがよりよく生きる上で、どのように「観察力」を起動させて活用していくか。氏が実践するドキュメンタリーの方法論をひもときながら、ともに考えます。
講師
想田和弘(映画作家)
https://www.kazuhirosoda.com/