2019年05月19日

レポート:4/25「アートの「外」とは?」

コース:アートの有用性
講師:ロジャー・マクドナルド(MADプログラム・ディレクター / AIT副ディレクター)
日時:4月25日(木)19:00-21:00 場所:代官山AITルーム

 
近年、日本国内にアール・ブリュットの美術館がつくられたり、都内で大規模なアウトサイダー・アート展が開催されています。「アール・ブリュット」「アウトサイダー・アート」とはいったいどのようなアートなのでしょうか?
「アウトサイド」という言葉をキーワードにアートの歴史を捉え直しながら、アートの可能性や有用性について考える「アートの有用性」コース。2回目のレクチャーとなる今回は、アール・ブリュットやアウトサイダー・アートの全体像を考えるレクチャーが行われました。

 

 
■アール・ブリュット / アウトサーダー・アート の歴史
1948年にフランス人画家のジャン・デュビュッフェによって提唱された「アール・ブリュット」とは、フランス語で「生の芸術」という意味で、もともとは精神病と診断された方が制作する作品のことを指しましたが、後に1972年にイギリスの美術批評家ロジャー・カーディナルによって定義が拡張され、その概念が「アウトサイダー・アート」として英語圏にも広まったといいます。(なお、ロジャー・カーディナルは、今回の講師 ロジャーさんの恩師でもあります。日本語訳された文献は出版されていないそうですが、ロジャーさんによるインタビュー記事が公開されています。)

 
■アール・ブリュット / アウトサイダー・アート のアーティストと作品
ロジャーさんは、「アウトサイダー・アート」の特徴として、以下のような4つの項目を挙げられました。
  ・アート業界と関係がない/うすい
  ・作品を作っていることを意識していない
  ・作品を鑑賞する人たちを意識していない
  ・美術教育の体験がない
しかしながら、これらもアーティストによってケース・バイ・ケースであるようです。
 

 
また、もともとは医療的な意味合いであった「アール・ブリュット」ですが、70年代に「アウトサイダー・アート」という言葉がでてきてから意味が拡張され、”スピリチュアル”や”変性意識状態”、また、”主流のアート界から無視されてきた” などの観点をもった作品が「アウトサイダー・アート」に分類されてきたと言います。レクチャーの中では、スライドを交えながら、7つの視点でアーティストや作品の背景、エピソードが多数紹介されました。

 
■「中心」と「周縁」のアートの関係
これらは「中心」ではなく「周縁」のアートとされてきましたが、「ドクメンタ5」(1972)や「第55回ヴェネチア・ ビエンナーレ国際美術展」(2013)など、アートの「中心」の側に迎え入れていくような取り組みもなされているといいます。また、系統的な美術史の分類にうまく乗らないアーティストたちにもう一度目を向ける取り組みや、60・70年代のアーティストたちの再評価もなされつつあるなど、現在「中心」と「周縁」の境界は溶けつつあるともいえるようです。

 
講義後、質疑の中では「こういった作品はアウトサイダー・アート?」といった疑問や「なぜこれまで「周縁」のアートは「中心」に無視されてきてしまったのか?」といった疑問があがり、ロジャーさんと受講生の間で活発なディスカッションが行われました。
アートに対するフォーカスを変えることで、現在の主流と考えられている美術史とは全く違った美術史を読み解いていくことができる可能性も示唆されるレクチャーでした。
 

 
次回(5/9)は、東京国立近代美術館主任研究員の保坂健二朗さんにより、日本における「アール・ブリュット」を掘り下げていただきます。 

 

高砂理恵

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